古民家旧糀屋は長らく空き家でしたが、大家さんのIさんから「壊そうと思っているんだけど、解体するにはどうすれば」とご相談がありました。
旧糀屋は江戸・明治時代には糀屋として営まれた歴史のある建物であることに加え、津屋崎千軒の中心沿いにある十分に魅力的な古民家で、解体するには惜しい建物でした。
そこで、応援団の山口・暮らしの問屋古橋で(一社)まち家族を立ち上げ、旧糀屋をまちの人と外から訪れる人が家族のように繋がれる場づくりの舞台として、Iさんから借りることになりました。
改装前に、建物に残っている荷物の整理を手分けして行いました。
そのほとんどは大家さんのおじいさんが世界中から集めたという数多ある郷土玩具でした。
あまりにも多いので、倉庫にしまってしまう前に郷土玩具市を開きました。
改修工事は応援団の西野木材株式会社が担当しました。古民家のよさを活かしながら、開放的な空間へと生まれ変わりました。
現在は、喫茶営業をメインに毎週日曜には旬の朝ご飯会、月ごとにさまざまなワークショップも行われ、「まち家族」に込められた想いを体現するかのように、まちの人と訪れる人の交流の場として育っています。
場を開いてから、2年経った今、旧糀屋店主の廣橋さんは、これまでをふり返ります。
「旧糀屋にもともとある文化や想いを“継ぐ”ということが(今の活動・営みの)原動力になりました。
たくさんの郷土玩具も大家さんのおじいさんが世界中から集めてきたものだったという話や、昔は通り土間でみそ甕が並んでいたとか、大事にされてきた跡を見たり聞いたりするうちに、受け継ぎたい、大事にしたいと思えました。
他人だけれど、そうした想いが見えてきてはじめて自分自身と旧糀屋とのつながりやご縁を感じました。」
旧糀屋に存在する『想い』を汲みながら、これからこの場所で実現したいことがあると語ります。
「春から始めた朝ごはん会を100回まで続けます。100回続けられたら、どんな人でも一緒に食卓を囲める関係がここにあって、みんなが幸せになれることを自分自身が信じきれるので。みんなにとって帰ってきたい場所であれたらと思います。」
“空き家”と一言いってしまえば空虚に聞こえてしまいますが、それぞれの家には良いこともあれば悪いこともあり、いろんな想いが存在しています。
“時が止まったままの家に残る息遣い”にじっと耳を澄ませて、これまでの旧糀屋の想いを継ぎ、これからの旧糀屋へと続いていきます。
活用時のポイント
喫茶スペースは、通りに面した2部屋を減築し、地域に開かれた土間空間をつくりました。上がり間や2階は畳・建具の交換に留め、元の間取りを活かしながら宿として運営されています。